2019.03.17
50年で老舗、100年で時代、200年で歴史
確定申告が終わりました。
税務の世界では、「税務繁忙期」という言葉があります。それは毎年12月から3月までの期間は、年末調整、法定調書の提出、個人所得税申告書と消費税申告書の提出という業務が目白押しに続く期間だから「繁忙期」と呼ぶのです。
なぜ個人の確定申告の期限が3月15日なのかというと、個人の所得を計算する期間が1月1日から12月31日までにきまっているので、12月31日を過ぎないと1年の所得を計算できないからです。所得税はすべての国民に適用となりますから、所得税の申告義務のある人は、1年間の所得の計算をして税務当局へ申告しなければなりません。その期限が3月15日と定められているのです。
所得税の申告書を作成すると、依頼者の1年間がよくわかります。そして世の中の潮流もわかります。
「なぜ日本だけが成長しないのか」なんて本も出ていますが、地域の中小企業経営者の所得が低迷していることを実感します。バブル時代を思い起こすと、土地の譲渡所得で多額の納税をする人が大勢いました。法人税の税収よりも土地譲渡にかかる税金の方が多かった時代もありました。
私はバブルが崩壊した後の平成5年に税理士を始めたのですが、その当時の方が現在よりも申告所得の多い人が多かったと思います。特に深刻なのは、個人事業者の所得の低迷です。
かつて繁盛した雑貨屋、八百屋、魚屋、洋品店、食堂、鮨屋、は激減しています。地方の商店街はシャッター通りになっており、代々続く老舗も、所得が低迷して青息吐息です。
先日、創業130年の老舗銘菓店の社長と話しました。「この店にしかないから名物」というスタンスで手作りにこだわり、多店舗展開はせずに経営を続けています。地方都市にとって「老舗の和菓子屋」がどのように生き残っていくかはとても重要なテーマです。地元元百貨店と銘菓と酒蔵は、地方都市にとって宝物みたいなものです。
百年以上続く老舗の家に生まれた後継者は、小さいときから事業の承継者として周りの期待を背負っています。自由に生きれれば、違った人生を歩むことができた、きっと何度もそんな被害者意識に苛まれてきたに違いありません。その被害者意識を乗り越えて、時代の変化に適応した老舗だけが200年の歴史を刻むことができます。
「会社は創業50年で老舗、100年で時代、200年で歴史になる」これは、タナベ経営の若松俊彦氏の言葉です。企業の最大の使命は「存続すること」です。
確定申告を終えると、企業の栄枯盛衰を感じます。過去の成功は未来を保証しない、来年の確定申告に向けてまた新しい気持ちでスタートしましょう。