〜 お気軽にお問い合わせください。 〜

〜 オフィスレター 〜

2019.03.20

「くれない症候群」から抜け出せ

経営に関する話題

伊藤忠商事の元会長の丹羽宇一郎氏が書いた「仕事と心の流儀」(講談社現代新書)を最近読みました。その中で気になったフレーズが「きみはアリになれるか。 トンボになれるか。 人間になれるか」という言葉です。これはかつて伊藤忠の入社試験で出たことのある質問のようです。

要は、入社して10年間くらいは目の前のものを運ぶことだけで精一杯。広く世の中を見渡すこともできない小さな存在です。この間にありのように地を這い、泥にまみれて、がむしゃらに目の前の仕事をこなしていけば、少しずつ知識が増えていき、常識も身についてくる。

アリの時期を過ぎ、30代前半を迎える頃になると、ようやく仕事の何たるかが少しわかるようになり、ここから40代前半までがトンボの時期です。この時期に複眼的な視点でものを見る、さまざまな可能性を探る姿勢、あらゆる角度から仕事を検証する視点を持つことができるのかということです。そうするためには、アリの時期以上に猛烈の勉強しなければならない。

このトンボの時期を過ごしてから、全体を大所高所から判断できるようになった40代後半から50代にかけて「人間」の時期を迎える。この時期は、血の通った温かさ、自分自身をコントロールできる力、部下や後輩を思いやる優しさ、皆をぐいぐい引っ張っていく力強さを身につける。自分ではなく他社を思いやる「利他の精神」を持つ、それが「人間になる」ということだという。

人間になるためには、精神的にも鍛練を積み、会社にとって最大の資産である人間というものをさらに勉強する必要がある。人を知ることは、経営の極意でもあると…

私はもう少しで64歳の誕生日を迎えますが、アリとトンボまではなんとかなったが、恥ずかしながらこの年になっても人間になっていないと思います。トンボの時期をしっかり卒業して、人間にならなければならない。

もうひとつこの本で心に残ったのが「くれない症候群」ということばです。

「自分が実力を発揮できないのは上司が認めてくれないからだ」、「仕事がうまくいかないのは部下が自分の思うように動いてくれないからだ」…等々、要は原因他人論から抜け出せない、 それが「利他の精神」になり切れないのでこの歳になっても人間になれない原因なのです。

「くれない症候群」からは脱却しよう、そのためにも常に勉強しよう、反省しよう、アリのようにひたむきに「くれない」ことなんて思いもせずに生きよう、

丹羽宇一郎さんの言葉は、心に沁みました。

«

»