2020.11.19
少子高齢化の進行と相続税
平成27年から相続税の基礎控除が5000万円+法定相続人の人数×1000万円から3000万円+法定相続人の人数×600万円という乱暴な増税が実施されました。その結果、相続が開始した人のうち相続税がかかる人の割合が増税前は4%程度だったのですが、平成27年分以降は8%を超過するようになりました。
全国平均で8%以上の人に相続税がかかるのですから、土地の値段が高い東京等の大都市に住んでいる方の場合、もっと相続税の課税割合は高くなります。そして少子化が進行しておりますから、相続人の数も減少しています。昭和60年に相続が開始した人の相続人の人数は平均6.4人だったのですが、平成29年では2.81人と半分以下の相続人の数となっています。
そして高齢化の進展とともに、相続が開始する人の人数は増えています。昭和60年に亡くなった人の人数は752,283人だったのですが、平成29年に亡くなった人の人数は1,340,397人ですから32年間の間に、死亡者は約1.8倍になっていることになります。亡くなる人が増えて、相続税の基礎控除が大幅に引き下げられたわけですから、相続税がかかる被相続人は大幅に増えることになります。
相続税の課税件数は昭和60年が51,847件だったのですが、平成29年では111,728件となりましたので、相続税の課税件数は32年間で2.15倍に上昇したことになります。そして相続税の納税額も昭和60年の9,261億円から平成29年の2兆141億円に上昇していますから、約2.17倍となったわけです。
少子高齢化は、これから大胆な移民政策でも採らない限りこれからますます進展していきます。元気に働く人が少なくなり、社会福祉を必要とする高齢者が増加するわけですから、医療も介護も年金もこれから大幅に節減するのは困難です。そして現在1億2千万人以上を支えているインフラが老朽化してきますので、その維持管理費用も減少しません。
「GDPは増えないのに必要なコストは減らない」という社会を支える「税制」ということになると、消費税と相続税や固定資産税だということになります。実際に、平成元年に3%でスタートした消費税は10%になったわけですから、3.33倍に増税されたわけです。相続税は2.17倍に増税され、固定資産税も平成元年に5.6兆円だったのですが、平成27年の税収は8.6兆円ですから1.5倍以上になっていますから、ひそかに増税され続けたわけです。
財務官僚は、政治家が誰になったとしても消費課税と資産課税を増税しようと懸命に働きかけますので、長期的に見れば消費税と相続税が増税されるという時代が続くことになります。
そうなるとこれからたいせつなことは、「どのように消費し、どのように蓄財するのか」ということになります。新型コロナは私たちにこれからの生き方を考えるよう迫っているように思います。