2021.10.12
環境許容の限界を超えている4つの分野
われわれホモサピエンスが登場して約20万年経過しました。そのうち18万8000年は狩猟採集生活をしていましたので、私たちの生活は地球環境の変化のままに振り回されてきました。その頃の毎年の気候の変化は今よりもずっと激しくて、ずっと寒かったのです。地球の大きな気候変動からいうと、現在は氷河期の中の「間氷期」なのだといわれています。
およそ1万2000年前に人類は世界各地で「農耕」をスタートさせますが、それはこの温暖な時期が来たことが大きな誘因となったといわれています。現在の温暖な時代を「完新生」と呼びますが、最近になって地球環境に人間が大きな影響を及ぼすようになったので、「人新生」と呼ぶこともできるのです。
人間は農耕を開始するまでは、自然に働きかけるのではなく「自然に従う」だけでしたので、地球環境の生命維持システムは健全に機能して地球上に多くの生命体を生み出すとともに、その気候変動等により多くの生命体を絶滅させました。「人新生」においては、人間が地球環境の生命維持システムに決定的な影響を及ぼし、その生命維持システムに重大な障碍を与えつつあります。
私たちは、地球の生命を育むシステムに未曽有の負荷をかけています。人間が地球環境に持続するための限界を超えて負荷をかけているのは以下の4つの項目だといわれています。
(1)気候変動
(2)土地転換
(3)窒素及びリン酸肥料の投与
(4)生物多様性
まず、気候変動に重大な影響を及ぼす「大気中の二酸化炭素濃度」ですが、3500ppmがその限界といわれているのに、現在400ppmを超えて増え続けています。そのせいで気温の上昇と空気の乾燥化が進んでいます。地球の砂漠化は進み、土壌に投与される窒素及びリン酸肥料の量は安全基準の2倍以上になっています。森林は減少し二酸化炭素の吸収源は減少する一方なのです。そして種の絶滅の速度は、安全とみなされる限度の10倍以上に達している(K・ワラース、「ドーナツ経済」)というのですからたいへんです。
2015年に国連で決議されたSDGsは、このような背景から発出されたものなのです。