2023.09.16
ギリシア人の物語
「塩野七生の最後の歴史長編」という触れ込みの「ギリシア人の物語」の第1巻と第2巻を読んだ。彼女の著作を読んでいるといつも感じることであるが、彼女の思考回路が日本人と少し異なっているという違和感を感じてしまう。
海外生活が長いので当然といえば当然であるが、いつも頭の中で考えていることが、日本語で構成されているのか、外国語で構成されているのか、それともミックスなのかによって言い回しはかなり異なるのは当たりまえだ。登場人物の説明や彼が考えていることについての表現が日本語離れしていることがよくあるのだ。
さて、ギリシアといば、なんといっても「民主主義」について思いを馳せるときに、今から2500年も前に民主政に基づく国家運営を行っていたという点に興味がそそられる。そもそも民主主義が成立するためには、「自立した教養のある市民」の存在が不可欠であり、それらが存在したことが驚異的なことである。そしてそのような民主政治を経験した国民であるところのギリシア人が、現在では「ユーロのお荷物」とまで言われているのはどうしてなのか?
たぶん、今から2500年前のエーゲ海の畔に立ったとすると、ギリシアは世界で最も優れた文明、そして最も賢い市民、もっとも繁栄した文化を誇る人たちであったに違いない。そして彼らの目には、ローマ人なんて教養もなければ文化度も低い野蛮人として映っていたに違いないのである。
最近、日本をめぐる意識の変化を感じることがしばしばあります。10年前であれば「韓国が日本を追い抜くなんてありえない」、「中国は必ず失速し、中国発の世界大恐慌が来る」、「日本は世界で最も優れた国なのだからまた日本が見直される」、「日本一番」なんてノー天気な「日本すごい」番組がユーチューブに氾濫していました。
ところが最近、「韓国が日本を抜いた」ということがもはや珍しいことではなくまったく当たり前のこととして語られることが多くなりました。というのもデジタル分野はもちろん、音楽やファッションや文化に至るまで、韓国に抜かれつつある日本が多くの場面で目に付くようになりました。日韓の格差が大きかったころには、韓国は日本に対して強烈なヘイトを向けてきましたが、最近ではあまり日本は意識されていないようです。
さて、ギリシアの話に戻りますが、間違いなくギリシアは2500年前頃は「ギリシアアズナンバーワン」だったのは間違いありません。しかしその後は再びその地位に返り咲くこともなく、他の大国に翻弄される歴史をたどります。
日本は、そして日本人は、今後どうなるのでしょう。デジタル化の波には徹底的に乗り遅れ、「モノづくり」の世界では「内燃機関の自動車」が過去のものになった場合に、唯一残った「クルマ」のカードも手放すのは時間の問題だともいえます。
振り返ってみれば、昭和の時代には、石油ショックもドルショックも逞しく乗り越えてきた日本でしたが、平成の時代になってからは「赤字国債を大量発行して毎年のように大型景気対策を続けた」、「為替介入して円安に誘導して企業利益を支えた」、「株価介入して株価を支えた」ので、産業構造は変わらずに「史上最大の利益」を獲得する大企業は続出しました。その結果、日本の産業界は構造的な変革を怠り、「デジタル後進国」、「非効率社会」、のままになっています。それで「超高齢社会」を迎え、人口が年々減少しているのですから、日本が二流国、三流国に沈んでいくのもやむをえないのかもしれません。