2020.04.10
定型約款についてのルールが明確になった(民法改正の重要ポイント)
現代の社会の基本ルールは、フランス革命がおこったころ(18世紀後半)にできあがりました。人間の権利は神から兵頭に与えられたもの(天賦人権説)で、一人一人が自由に契約を締結することによって(契約自由の原則)、自由な経済活動を保証する社会のルールが近代民法としてまとめられました。
日本も明治維新から西欧の資本主義経済を導入し、市民社会のルールとして民法を1896年に制定しました。そして我が国の民法は、今日まで小さな改正はありましたが、最近になって抜本的な改正を分野を分けて実施しています。今年の4月1日から、全面的に改正された債権法が施行されました。
その中でも重要な改正の一つが定型約款に関する民法改正です。
民法は権利の主体として「自由で平等な個人」を予定していましたので、個人間で自由に契約を取り交わして、自由な経済活動を行う社会を想定していました。そしてその自由な契約社会の弊害は、「公序良俗違反」等の権利行使の行き過ぎに関する一般ルールで権利の乱用を防止しようとしていました。
ところが現代社会は、「自由な契約」が支配する分野はあまり多くありません。携帯電話の契約も、電気や水道の利用契約も、多くの契約について自由に決めるのではなく「決まった契約に従って申し込む」ということしかできなくなっています。私たちを取り巻く多くの取引相手は「定型約款」を用意して私たちはそれに従うほかない状態に陥っています。
このような「定型約款」についてきちんとしたルールを定めようというのが今回の民法改正です。
この中で最も重要な改正は、この定型約款の内容を変更する場合のルールを定めたことです。定型約款は多くの場合その約款の内容を決めるのは大企業で、その決められた定型約款に従うしかないのがその大企業のサービスの提供を受ける多数の個人です。この内容を変更しようとする場合に、いちいち一人一人と再契約をすることは取引の実情に合わないことが多いことから、相手方に利益になることや、一定のルールに従って変更するのなら相手方の合意なしに契約内容を変更できるとするものです。
体力が全き違う大企業と一般個人を、契約自由の原則で今までの民法のルールを用意しただけでは不十分だったわけです。
詳しい内容は省きますが、民法制定から120年以上も経過しています。憲法もそうですが、日本人は一度決めたルールは時代にそぐわなくてもなかなか変えようとしない民族なのかもしれませんね。