〜 お気軽にお問い合わせください。 〜

〜 オフィスレター 〜

2021.10.11

「経済成長」というゴマカシ

経営に関する話題

 日本においては、1991年のバブル経済の崩壊以降すでに30年経過しています。そして日本経済はこの30年間もの間、ほとんど経済成長していません。1991年の名目GDPが492兆円で2020年の名目GDPは539兆円なのですから、29年間で9.5%GDPが増えたことになりますが、この間ずっと経済成長することを目指して毎年赤字国債を発行し続けてきました。
 日本の政府総債務の残高は、1991年が306兆円で2020年度末で1381兆円ですから、29年かけてGDPを47兆円増やすために、借金を1075兆円増やしたことになります。最近、財政赤字についてはやかましく言われないようになってきましたが、日本の財政赤字は世界でも突出しています。いくら日本政府が通貨発行権を有しているからといっても、円に対する国際的な信認が失われたら、日本経済が無傷でいられるとは思えません。
 
 GDPの総額の成長率が国債発行残高の増加率を上回ることができれば、GDPと借金の比率が改善されることになりますが、この30年間の間、多くの政治家はそれを目指すといいましたが、1年たりともそれが実現したことはありません。

 そもそも、経済成長とは何によって実現するのでしょうか?
 ➀人口の増加による消費の増加
 ➁技術革新による生産力の増加  
 ➂設備投資による生産力の増加
 とかが考えられますが、そもそも可能なのでしょうか?
 ➀の人口については、すでに日本は本格的な人口減少時代を迎えていますので、この要素はGDPを減少させる力学が働いています。
 ➁の技術革新については、例えばロボット化により生産量を増やすことができても、それを販売することができなければならないのです。そして最近の技術革新は、消費を増やすことより減らすことを増価させる傾向にあります。例えば、自動運転が普及するとすれば、少ない自動車で多くの移動ニーズを満たすことができますので、自動車がそれほどいらないことになります。
 そして➂の設備投資については、中国や東南アジアが積極的に最新工場を建設委しています。日本の産業空洞化の傾向は収まったというものの「工場の建設ラッシュ」なんてありません。

 世界中の国が、「GDPの成長」を目指しています。GDPの成長は社会、経済、政治の諸問題を緩和することになりますが、世界中の国が経済成長すれば、地球環境に深刻なダメージを与えることになります。今までは、地球環境に悪影響を与えても地球の環境を大きく損ねることがありませんでしたが、温暖化の問題一つとってももはや地球の環境は限界を迎え始めているのです。
 2015年に国連で193か国が集まって、SDGsを決議しました。これは2030年までに人類が持続可能となる開発目標を定めたものなのですが、この目標は民間企業もその主体となっています。
 経済成長するためには民間企業の業績の向上が不可欠なのですが、大量生産と大量消費という従来の発想による経済成長では、地球環境の破壊が限界点を超えてしまします。

 私たちは何のために「経済成長」しなければならないのでしょうか?
 私たちが大切に思っていることの中に、GDPにカウントされない多くのことがありますが、私たちの目標がGDPの成長だけだとしたらさみしいことになります。そしてもはや30年も実現できていないことについては、その目的について再考することが必要だと思います。

«

»