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2020.10.12

よく考えると変な理論には気を付けよう!

 コロナ禍はこの世の中を大きく変えようとしていますが、日本経済が構造問題を抱えたのは30年以上も前の話であって、新型コロナウイルスによって構造問題を抱えたわけではありません。今から30年前にジャパンアズナンバーワンといわれた日本経済でしたが、バブルの崩壊とともに30年間凋落を続けていたのです。
 コロナ禍によってせっかく増進し続けていたインバウンドは消滅し、国内需要も大きく減少していますので、日本経済はこれから大きなダメージを受けることになります。しかし構造上の問題は、それ以前から抱えていたということです。バブル崩壊以降、山一證券をはじめとして多くの金融機関や保険会社が破たんした金融危機、そしてリーマンショック、東日本大震災ショックとこの30年間で日本経済は大きく揺るがせられました。
 そして「デフレ退治」のホープとして「黒田バズーカ」が発射され、誇らしげに「アベノミクス」がスタートしました。「異次元の金融緩和」というのですから、国民の多くが期待し、すぐにでもデフレが退治され日本が再び成長性を回復するかもしれないという期待を抱かせました。しかしその発射は良かったものの、いつまでたっても2%の物価上昇は実現されず、その着地はどうするのか何のアナウンスもありません。高齢の黒田総裁はいったいいつまで続投すればいいのかわかりません。
 そもそも日本経済が陥った構造問題は、日本の産業の競争力の問題であり、日本の産業戦略の問題であったのです。それを「異次元の金融緩和」をすればその構造問題が解決されるがごとき主張が多くのリフレ経済学者からなされました。しかしかつて一世を風靡した「メイドインジャパン」が、いつの間にか魅力がなくなっていたことに問題があったのです。携帯電話やナビゲーションの世界で、日本製品の品質は圧倒的だったのですが、いつの間にか魅力的な日本製品がなくなってしまったことこそ問題なのです。当たり前のことですが、金融緩和と日本製品の魅力の問題は別次元の問題なのですから、金融緩和すれば日本の構造問題は解決するということはなかったのです。

 最近MMT(現代貨幣理論 Mordern Monetary Theory)という理論が注目を集めています。これはインフレにならない限り自国通貨建てで政府がいくら借金しても問題ないという理論です。簡単に言えば、「いくら借金しても人々がその通貨を信用する限り問題ない」という理論なので、本来新しくも何でもない理論なのですが、「インフレにならない限り問題ない」というに過ぎません。
 近視眼的に見れば、日本の経常収支が赤字になることは考えずらいので、日本円に対する信認はそう簡単には崩れないように思えます。しかし日本製品に魅力がなければ、いずれ貿易収支は大幅に赤字になるのは明らかであり、経常収支の黒字が安定しなければ円の国際的信認も危うくなるのは自明のことです。
 リーマンショックの前は、「高度な金融工学」という言葉がありました。「低所得者層が組んだ住宅ローンでも、高度な金融工学を駆使したポートフォリオの格付けはAAAである」という理屈は、リーマンショックで木っ端みじんに崩壊しました。金融緩和をすれば日本の構造問題は解決するというリフレ経済理論も超え高に叫ぶ人はいなくなりました。「土地は有限なので、長期的に見れば値上がりし続ける」という土地神話も崩壊して30年経過します。

 「よく考えればそんなことはあり得ないのは当たり前」な理論が、まことしやかに語られる時は「あぶない」のです。みなさん気を付けましょう!

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